亜梨子が服装を変えてからも、大暴れは続いた。兎耳な巨大少女・真夜が人をからかうように逃げ続けるの
で、それを追いかけるのに必死だったからだった。
「もう邪魔! この建物!」
目の前に小型のマンションが立ち塞がっているのに気づいて、私服姿の亜梨子はためらい一つ無く足を振り
上げて蹴飛ばした。
ふわりとチェックのスカートが翻り、ソックスとスニーカーに包まれた足が凶器と化してマンションを簡単
に分断する。階層まで剥き出しになったが、亜梨子はかまったりせずに瓦礫を踏みつけると、ついでとばか
りに足だけで全壊させてしまった。しかし、被害はそれだけに留まらなかった。マンションを破壊した巨大
少女は、周囲に立ち並ぶ住宅を片っ端から蹂躙し始めたからだった。建物が一瞬の内に瓦礫となり、電線が
断ち切られて火花を散らし、潰された車がスクラップになったりしたが、カジュアルな服装の亜梨子は気に
しているように見えなかった。
「……もしかして、わざとやってない?」
思わず真夜が声をかけたのは、一段と破壊劇が進んだ後のことだった。
「何のこと? 隙があるなら襲うわよ」
「それは勘弁してほしいけど、わざと建物を壊してるように見えてたからね」
「決まってるじゃない、わざとよ」
悠然とポーズを決めて、亜梨子は不敵に笑った。足元では道路上の車や瓦礫を踏み潰したままだったが、も
ちろん気にしていない。
「あなたを追いかけるのは半分口実。本当は破壊の限りを尽くしてしまいたいの!」
平然と言い切って、亜梨子は本能のままに行動した。いきなり真夜がいるのとは別の地区に襲いかかったか
らだった。
そこはちょっとした繁華街になっており、それなりに大きな建物も立ち並んでいたが、巨大化した亜梨子に
してみればただの獲物に過ぎなかった。まずは大通りの車を全て蹴散らして進むと、立ち塞がった歩道橋を
簡単に地面から引き抜いて両手に持つ。直後に何が起こるのか真夜には分かったが、声をかける間も無かっ
た。いきなり亜梨子は、束ねた髪を揺らしながら立ち並ぶファッションビルに歩道橋を叩きつけたからだっ
た。武器を手にしている事もあって、建物はあっさりと前面が崩壊し、砕けたガラスが陽光に反射する。
それでも亜梨子は、豪快にスカートを翻して蹴りを浴びせると、両手をかけて思い切り押し倒してしまった
。これで複数の建物が崩壊したが、なおも瓦礫を両手で持ち上げて別の建物に叩きつける。轟音が響き渡り
、繁華街は次第に爆撃された後のように破壊されていく。
「派手に壊すねえ。見ていてほれぼれするね」
「いいでしょう? 幾らでも壊していいんだから!」
瓦礫の上に仁王立ちになっていた亜梨子は調子に乗っていた。不敵に笑って言い切ると、今度は電話局の建
物に襲いかかって、屋上にあった大型アンテナを引き抜いてしまったからだった。
それを両手で持って構えると、いきなり電話局自体の建物に叩きつけて、アンテナと建物を一度に壊してし
まった。
「このままじゃ街がめちゃめちゃになるな。そろそろあれを出すとするか」
あまりの暴れっぷりの良さに、真夜はついにある決断を下した。一段と面白くなる事を期待しながら、一回
指を鳴らす。
「え……?」
心の底から破壊劇を楽しんでいた亜梨子だったが、異変に気がつくまで時間はかからなかった。自分が走っ
た事で壊滅した通りに、まるでラジコンのように戦車が数台進んできたからである。
「今度は防衛軍と遊んでもらうよ。もちろんラジコン操縦だから気にしなくてもいい。……勝てるかな?」
「こんなのまで出すなんて……。平気よ、すぐにめちゃめちゃにしてあげる!」
新たな獲物の出現に、亜梨子は嬉しそうな笑みを浮かべたが、戦車が砲塔を持ち上げて最初の一撃を放った
途端。表情は驚きに変わった。
いきなり腹部に衝撃があったかと思うと、そのまま大通りに座り込んでしまったからである。スカートの下
で車などがさらに潰れてしまい、伸ばした手は周囲の建物を思い切り薙ぎ払う。
「今の、何……?」
「痛くなくても衝撃は消してないからね。反撃しないと何度でも食らう羽目になるわよ」
その言葉を合図にするかのように、戦車が一斉に砲撃を浴びせてきた。全て巨大な亜梨子に命中し、衝撃と
爆発が少女を包み込む。
「もう怒った! 徹底的にやっつけてやるから!」
しかし、その攻撃は亜梨子を本気にさせただけだった。砲撃が止むのを狙って立ち上がると、ついに逆襲に
出たからだった。
戦場と化した大通りのアスファルトに足跡を残しながら歩くと、巨大化した普段着少女は戦車の一台を片手
だけで掴み上げる。相手が抵抗できないのを確かめると、笑いながら地面に向かって叩きつける。そこには
他の戦車があったが、空中から落とされた<同僚>を受け止めるのは到底不可能だった。
次の瞬間、派手な爆発が発生したかと思うと、亜梨子の周囲は一瞬炎と煙に包まれた。さすがの巨大少女も
びっくりしたが、視界が晴れると自分の破壊劇に満足そうな笑みを浮かべる。
「やっぱり簡単じゃない。次は来ないの?」
「相手にならないわね。だったらこれでどうかしら?」
再び、真夜が指を鳴らすのと同時に。
まるで魔法のように新たな戦車が十台近く出現した。いずれも亜梨子を狙っていたが、攻撃は実行されなか
った。先手必勝とばかりに、身長50メートル近くになった少女が豪快な蹴りを浴びせたからだった。それ
だけで半数が吹き飛び、周囲の建物を巻き込んで爆発したが、亜梨子は近くのビルの屋上から看板を引き抜
くと、今度はそれを残っていた戦車に叩きつけた挙げ句、そのまま歩き始める。
「何をする気かしら?」
「もちろん、お仕置き!」
嬉々として言い切るのと同時に。赤いスニーカーがついに戦車の上に下ろされた。そのまま全体重をかける
と、まるで模型のように簡単に潰れてしまう。
あまりのあっけなさに亜梨子は少しだけ驚いたような表情を見せたが、すぐに他の戦車も踏み潰してしまっ
た。
「どう? わたしの暴れ方は?」
ついでとばかりに周囲の建物を壊して、亜梨子は瓦礫の上に立ってポーズを決めた。
長い黒髪を軽く束ね、プリントTシャツにブルーのチェック模様のスカート、スタジャン風のジャケット、
膝までの長さの黒のソックス、そして赤のコンバーススニーカー。
シンプルでカジュアルな私服姿のまま身長50メートル近くになっていたが、なぜか周囲の瓦礫が不自然に
見えなかった。
「最高だな。正直、追いかけっこよりも面白いな」
「そうね。で、次は何をするの?」
「よし。また戦ってみる? 勝ったらポイントを進呈するから」
「いいわよ。今度も負けないから! 戦場はそうね……あの一帯でいいかしら?」
「復元されたお城にビルの建ち並ぶ中心街、そして大型の駅か。リングには最高だな。いいよ。それでいこ
う」
あっさりと真夜は同意した。彼女もまた、追いかけっこよりも街を破壊し尽くしながら戦う事に楽しみを覚
えていたのだった。
こうして。
二人の巨大少女の追いかけっこの舞台となっている街は、戦場と化して破壊されていくのだった……。

亜梨子と真夜、二人の巨大少女が再現された天守閣を中心とする公園に足を踏み入れたのはそれからしばら
くしてからのことだった。
「いよいよ怪獣映画になってきたわね。こういうのを壊して戦えるなんて」
今から最悪の破壊劇を始めようというのも関わらず、亜梨子は無邪気そのものだった。自分の背丈とほとん
ど変わらないお城の天守閣の屋根に手をかけてはしゃいでいたからである。
「いいでしょう? 最悪の破壊劇、期待してるわよ」
真夜もまた、多少興奮しているようだった。気がつくと服装が変わっており、よく似合うブレザー制服に身
を包んでいた。もちろん、兎の耳と尻尾は健在だったので、どこか妖しげな色気を漂わせていた。
「それにしても、スカートも似合うのね。足長いし」
「ふふ。後半はこの服装で勝負して上げる」
「面白くなりそうね。でも、この服装になったわたしに勝てるかしら?」
言い切って、亜梨子は天守閣を横に置いた状態で身構えた。スニーカーでは容赦なく公園を踏み潰していた
が、もちろん本人は気にしていない。
「私服になると強気になるなんて、珍しいこと」
「いいじゃない。こういう服装が好きなんだから。さあ、始めるわよ!」
そう言うのと、最初の攻撃が同時だった。真夜が構えない内に亜梨子はダッシュすると、いきなりタックル
したからである。不意を突かれてはとても避けられず、ブレザー制服のまま巨大化した兎少女は簡単にその
場に転んでしまう。チェックのスカートの下で休憩所や木々が倒れていったが、亜梨子はさらにキックまで
食らわせる。
「痛いじゃない、何するの!?」
「痛くないのによく言うわね。これでも食らったらどうかしら?」
そう言うなり、亜梨子は近くの野球場に歩いていくと、ナイター照明灯を簡単に引き抜いてしまった。それ
を見ながら立ち上がった真夜だったが、亜梨子が照明灯を武器に攻撃してきたので慌てた。とっさに両腕で
受け止めたものの、力の差もあって、バランスを崩す。
「隙あり!」
最大のチャンスとばかりに、巨大化した普段着少女はぼろぼろになった照明灯を叩きつけようとしたが……
真夜が口許に笑みを浮かべたのはその時だった。
照明灯を掴むと、逆に投げ飛ばしたからだった。今度は亜梨子がバランスを失い……背後にあった天守閣に
背中からぶつかってしまった。その瞬間、復元されたお城は簡単に半分が崩れ去り、瓦礫が巨大なスニーカ
ーの足元に散らばる。それでも亜梨子は壊されたお城に構わずに体を起こした。背後ではばらばらと建物が
崩れていったが、両足を開いて身構える。
「やっぱり簡単に壊れるわね。せっかくのお城も」
「仕方ないじゃない。巨大化しているんだから。それよりもお返し!」
真夜が隙をみせたのを見逃す亜梨子ではなかった。スカートを翻しながら、突っ込んでいったからだった。
また突き飛ばしてくると思いながら構えた真夜だったが、その予想は裏切られた。
体を低くした亜梨子は何と、真夜の右足を掴んで無理やり持ち上げてしまったからだった。慌ててスカート
を押さえようとした兎少女だったが、それが隙になってしまった。完全にバランスを崩して、半壊したお城
に正面から突っ込んでしまったからだった。たったそれだけで、豪華な天守閣は土台ごと崩壊して、周囲に
瓦礫を撒き散らす。
「あーあ。パンツまで丸見え。ちょっとみっともないわね」
「ふふ。残念でした。これは見せパンなのよね。でも、大胆でしょう? 丸見えでもお構いなしに暴れると

「もしかして、わたしが穿いているのも?」
今着ている服を用意したのも真夜である事を思い出しながら、亜梨子は聞き返す。
「もちろん。だから気にしてなくてもいいの」
「そうなのね……」
考え込むようなポーズになった亜梨子だったが、真夜が動いたのでびっくりした。何をしてくるのか分から
ず、瓦礫を踏みつけながら構えたが……。
真夜は巨大な普段着少女の腕を掴むと、振り回すように公園の外へと投げ飛ばした。瓦礫や公園の施設を容
赦なく踏みつけながら抵抗しようとした亜梨子だったが、堀にかかる橋を踏み潰した瞬間、バランスを崩し
てしまった。
「あっ……!」
驚いた時には手遅れだった。身長50メートル近い少女の巨体は、周囲に建ち並ぶビルを破壊しながら転が
ってしまったからだった。スカートもまくれてしまい、白いパンツが半分以上見えてしまう。
「ふーん。君は白が好みなのね。雰囲気にあってるじゃない」
「見ないでよ……。恥ずかしいんだから」
「見せパンだから恥ずかしくないもん!って台詞を期待してたんだけどね。だからお仕置き!」
道路上の車を踏み潰し、瓦礫を蹴散らしながら歩いてきた真夜だったが、手近に半壊したビルを見つけると
、それを土台ごとを持ち上げてしまった。それに気づいた亜梨子は、スカートを押さえながら転がった。ス
タジャンの下でさらに瓦礫が潰れていったが、真夜にビルを叩きつけられて、さすがに意識が遠くなる。
「酷い姿になったわね。でも、私だって簡単には負けるわけにはいかないの!」
そう言いながらも。笑いながら真夜は転がったままの亜梨子の両足を掴んでしまった。抵抗にも構わず、
り回すように転がす。たったそれだけで、周囲の建物はまとめて崩壊し、一部が炎上して煙を吹き上げ始め
る。
「そして、街は戦場になりました。不思議の国に迷い込んだアリスは兎に負けて、街を破壊する道具と成り
下がってしまったのでした、と」
したり顔で、真夜はつぶやいた。アリスの名前を持つ巨大少女はなおも転がったままだったが、半壊したビ
ルに寄りかかりながら体を起こす。
「でも、まだまだ壊し足りないわね。せっかくめちゃめちゃにする為に用意したんだから!」
真夜が動いたのはその時だった。まだ呆然とする亜梨子を無理やり立たせると、今度は大通りに突き飛ばし
たからだった。抵抗一つせずに亜梨子はぎっしりと車で埋まった通りに座り込んでしまう。スカートの下で
多くの車がスクラップになり、一部が爆発して炎上する。通りに面した建物も破壊されて、破片が周囲に散
らばる。
「さあ、反撃してみたらどう? きみの実力はそんなものじゃないはず」
「……分かってるわよ。わたしを本気で怒らせたらどうなるか、分かってないようだし」
ゆっくりと、亜梨子が立ち上がった。赤いキャンバススニーカーで車を踏み潰し、道路を陥没させながら真
夜を睨みつける。真夜は気づいていなかったが、この時亜梨子は近くにある大型の送電線塔に目をつけてい
た。敏捷な動きをする巨大な制服兎少女を捕まえるには道具が必要だった。その後は……。
わたしを本気にさせた事を後悔しないで欲しいわね。
そう思いながら、亜梨子はついに逆襲に転じたのだった。

次に動いたのは、亜梨子の方だった。真夜が身構えたのを見ると、いきなり奇襲攻撃に出たからである。
「えいっ!」
気合のこもった声で、足元でスクラップになりかけていた車をまとめて蹴飛ばしたからである。まるで木の
葉のように舞った車は真夜を直撃し、さすがの巨大兎少女も怯んでしまう。
その隙を亜梨子は見逃さなかった。豪快に立ち塞がるビルを壊しながら無傷の地区に突入したからである。
スカートが翻るたびに建物が崩壊し、派手に埃が舞い上がる。轟音が轟き、巨大なスニーカー型の足跡が地
面に残されていく。まるで、少女の破壊力を証明するかのように。
「襲ってこない……?」
最初、真夜は亜梨子の行動に戸惑ったようだった。しかし、すぐに可逆的な笑みを浮かべると、制服に着い
た車のスクラップを払って後を追う。
「そんなに街を壊したいならば手伝って上げる!」
巨大な制服少女は亜梨子の行動を破壊衝動が高じた結果だと判断した。対戦相手を無視するするならばこっ
ちにも考えがある。その巨体を武器に、さらに街を破壊してしまうのだ。
ソックスとローファーに包まれた足で小さな建物を全て蹴散らしながら、真夜が亜梨子に追いついたのは別
の大通りまで来た時だった。いきなり背中から掴みかかると、無造作に押し倒したからである。予想してい
なかったのか、普段着姿の巨大少女は呆気なくバランスを崩し、自分の背丈近くの高さのあるマンションに
正面から突っ込んでしまった。伸ばされた手が屋上に振り下ろされて、そのまま建物を破壊する。膝は道路
上の車を潰し、さらに爆発炎上させる。それでも、亜梨子は反撃を忘れなかった。
無警戒に近づいてきた真夜に、スカートが翻るのも構わないキックをお見舞いしたからだった。いきなり直
撃され、スカートの奥の白い布がわずかに見えたが、真夜は為す術無く大通りに転がってしまう。巨体の下
で道路が陥没し、多くの車が巻き添えを食らったが、亜梨子はそれを見ることなく立ち上がった。その横顔
にはしてやったりと言わんばかりの笑みが浮かんでいた。
予定通り。さあ、作戦開始!
そう思いながら亜梨子が襲いかかったのは……さっき目をつけた高圧電線塔だった。巨大化した少女の胸元
までくるような大きなものだったが、武器に選んだ理由はそれだけではなかった。
「これを武器にしたら面白そうなのよね……。色々な意味で!」
思わずつぶやくと、亜梨子はいきなり電線塔から電線を引きちぎってしまった。派手に火花が散ったが、ま
ったく熱くなかったので全て引きちぎってしまうと、今度は電線塔自体を地面から引き抜いてしまった。
「まさか、それを武器にする気?」
背後から声が聞こえて、亜梨子は電線塔を手にしたまま振り向いた。気がつくと、巨大なブレザー兎少女は
スクラップだらけになった大通りに堂々と立っていた。既に周囲の建物は破壊されていたが、不思議と絵に
なっていた。
「そうよ。こーやってね!」
真夜の言葉に、亜梨子は行動で答えた。いきなりダッシュすると正面から勝負を挑んだからだった。まずは
、ちぎられた電線をひきずったまま、電線塔を真夜に叩きつける。しかし、相手もさすがに受け止めたので
、武器にされた電線塔は簡単に原形を失って、周囲に破片を散らばらせる。
「こんな程度では倒せないって言ってるじゃない!」
電線を邪魔に思いながらも、真夜は押し返した。そこからすかさず反撃に出ようとしたが……。亜梨子がい
きなりタックルしてきたので、思わず受け止めてしまい、その場にしりもちをついてしまった。
この程度ならば大したことはない。
すぐに立ち上がろうとした真夜だったが……。
会心の笑みを浮かべた巨大亜梨子が、半壊した電線塔から伸びる電線を巻き付けてきたので心底驚いた。
抵抗しようとしたものの、あっと言う間に何重にも巻きつけられて動けなくなる。
「巨大制服兎捕縛成功! どう? 電線に巻かれてしまった気分は」
「こんな手があるなんて思わなかった。……ここからどうする気?」
「もちろん、お返しするんじゃない! たっぷりと」
加虐的な笑みが全てを物語っていた。亜梨子は無理やり真夜を立たせると、まだ壊されていない住宅地目掛
けて転がしてしまった。それこそ何もできず、真夜は制服に包まれた巨体の下で建物を破壊しまくり、スカ
ートもまくれたまま瓦礫の上に転がる羽目になってしまう。
「うわー恥ずかしいわね。制服姿なのに縞パン丸見え。しかもその下で住宅壊してるし」
「こんな事をしてただで済むと思ってるの?」
「思ってるわよ。ほら、立ちなさい!」
抵抗はできなかった。真夜は亜梨子に操られるまま立ち上がると、今度はマンションが建ち並ぶ地区に叩き
つけられてしまった。たった一撃で二つの建物が分断されたが、さらに転んでしまったので、今度は大型の
スーパーも巻き込んでしまった。
「酷い……。ここまでするなんて」
「恨みは晴らさせてもらうわよ。……でも、こうやって見るとあなたって結構可愛いのね」
突然、亜梨子の言葉が軟化した。真夜がびっくりする間に、悠然とスーパーの駐車場の車を踏み潰しながら
近づいてくると、半壊したスーパーの上に横たわる真夜にのしかかってくる。普段着に包まれた巨体が被い
かぶさり、顔も近づいてきてさすがの兎少女も慌てる。
「……まさか、そっちの趣味もあるの?」
「そっちの趣味? わたしは格好いい男の子が大好きな普通の女の子なのに」
「だったら……」
「でも、格好よかったり可愛いかったりする女の子も好きなのよ♪」
「嬉しそうに言う台詞じゃない!」
「大丈夫。子供を作ったりはしないから♪」
「そーいう問題じゃないでしょう!」
間近で亜梨子の可愛らしい顔を見る羽目になり、真夜は必死になって体をよじった。その途端、体を巻きつ
けていた電線が緩んだので、何とか両手を自由にするとそのまま亜梨子を突き飛ばす。まったく予想してい
なかったのか、巨大化した普段着少女は簡単に転がってまた建物を壊してしまった。
「何するのよ。これからいいところだったのに」
「油断も隙も無いわね……。こうなったらもう一勝負する? 舞台はあそこでいい?」
「あっ……。大きな駅ね。凄い。電車も停まってるし、壊したら凄そう」
「電車壊しは巨大化の醍醐味。たっぷりと味あわせてあげるから」
これ以上自分に対して変な気を起こされても困るので、真夜は急いで言い切ると、そのまま新たな戦場へと
向かって歩き始めた。
うっとりとしたような表情を崩さずに、亜梨子も後に続いたのだった。

アクティブな私服に身を包んだ亜梨子、ブレザー制服姿の兎少女の真夜が足を止めたのは、駅前広場まで来
た時だった。
「ここが最後の戦場になるのね。面白そう」
興奮を隠せない様子で、亜梨子は言った。足元では交差点の車を全て踏みつけていたが、胸元に両手を添え
て嬉しそうだった。
「好きに壊してもいいのよ。どうせ最初からめちゃめちゃにしてしまうつもりだったんだから」
笑って真夜も答える。二人の巨大少女の前には、高架線上に展開する大型駅が破壊される瞬間を待っていた
。駅前広場にはロータリーもあって、バスやタクシーが停まっていたが、いずれもすぐにスクラップになる
のは間違いなかった。
「電車もあるんでしょう?」
「もちろん。ここからは見えないけどこの奥には車両ヤードもあるから巻き込んでしまうのもいいわね」
「そうよね……。じゃ、いくわよ!」
亜梨子のその声が、大型駅大破壊作戦の開始の合図となった。巨大化した普段着少女は、チェックのミニス
カートをふわりと翻しながら駅前広場に足を踏み入れたからである。赤いキャンバススニーカーの下で、ロ
ータリーに停まっていたタクシーやバスが簡単に破壊されていく。
「ちょっと、攻撃しないの?」
「これ見てたら自分の手で壊したくなっちゃった♪ ほら、見てよ。こんなに簡単に壊せるんだから!」
驚いた真夜の言葉にも、亜梨子は耳を貸さなかった。スタジャン風ジャケットに包まれた腕をロータリーに
面していた建物に叩きつけて、正面を吹き飛ばしてしまったからである。もちろんそれだけでは満足できな
いので、今度はスニーカーと黒のソックスに包まれた足で蹴り上げて、周囲に瓦礫を撒き散らしてしまった
。足元にはスクラップになった車が散乱し、その上にビルが壊された際の瓦礫が降り注いだが、亜梨子は満
足そうだった。その場に無造作に膝をついて、壊したばかりの歩道橋を片手で掴み上げると、それを武器に
して建ち並ぶビルを壊してしまったからである。
「ねえ、壊さないの? みーんなわたしがめちゃめちゃにしちゃうわよ」
亜梨子が言い切ったのは、三つの大型ビルがただの瓦礫と化した後のことだった。スニーカーで瓦礫を踏み
潰し、手には歩道橋の成れの果てを持ったままだった。
「そうね。やっぱりあなたにはお仕置きが必要ね!」
いかにもわざとらしい亜梨子の言葉に対して、真夜は行動で応えた。油断する巨大普段着少女の腕を掴むと
、そのまま振り回してしまったからである。亜梨子があっと思った時には遅かった。
「えーい!」
真夜の掛け声と同時に、まだ壊していなかった大型駅の中央部に座り込んでしまったからである。スカート
に包まれたヒップの下でホームや建物が潰れ、とっさに伸ばした手は駅自体を巻き込んで破壊する。100
0トンを越す体重を受け止めては、持ちこたえるはずがなかったが、亜梨子は構ったりしなかった。駅を壊
して足を踏み入れてきた真夜の攻撃を無造作に転がってかわしたからである。ジャケットやスカートからは
瓦礫の破片がぼろぼろと落下し、巨大化少女の全身が壮絶な破壊劇を演出する。
「簡単に壊れるわね、そんなことをすると」
「狙ってやってるから当然じゃない」
平然と言いながら、亜梨子が体を起こしたのは駅の建物が全て破壊された直後のことだった。ただの瓦礫と
なった駅の上に片膝をついて、真夜を見つめ返す。束ねた長い髪が上空の風に揺れ、洋服からは瓦礫などが
落下していたが、その姿は真夜でも息を呑むほど凛々しかった。
それを見て、亜梨子が反撃に出た。スニーカーで瓦礫や残っていた建物を蹴散らしながら、真夜に体当たり
したからだった。しかし、予想していた巨大兎少女は何とか受け止める。
「甘いわね。もっと建物を壊して反省しなさい!」
あまりくっついたままだと、また<百合>チックな発言が出かねないので、真夜は兎耳を揺らしながら亜梨
子を投げ飛ばした。つもりだったが……。ブレザーの襟を掴まれたままだったので、自分もまたまだ無傷だ
った地区へと体を投げ出す羽目になった。そこにあったのは……石油がたっぷり詰まったタンクだった。
次の瞬間、大型駅自体が原形を失う程の大爆発が発生して、一気に炎と煙が吹き上がった。駅の南半分は炎
の海と化し、二人の巨大少女はその中央に転がって建物を破壊する。
「炎の中のキャットファイトって面白いわね」
ゆっくりと体を起こして、亜梨子は笑って言い切った。その横顔は炎の輝きを受けて、奇妙な陰影が浮かん
でいた。
「こんなに最悪な破壊劇を自分でする子は初めてよ。まったく、めちゃめちゃじゃない」
「いいのいいの。もう誰にも止められないんだから!」
亜梨子が攻撃に転じたのはその時だった。炎上する瓦礫の中央に転がったままの真夜に、四つんばいになっ
て近づくと近くにあった大きな照明灯を引き抜いて叩きつけたからである。それが原形を失うと簡単に投げ
捨てて、無理やり体を起こす。
「今度はあなたが壊してしまいなさい!」
抵抗する事すらも出来なかった。ブレザー制服に身を包んだ巨大少女は、スカートがまくれたまま、まだあ
まり壊されていなかった駅の北側に叩きつけられてしまったからだった。そこには特急列車なども停まって
いたが、少女の体重によって簡単に潰れてしまい、無残なスクラップとなる。それでも亜梨子は立ち上がる
と、炎を蹴散らして真夜に近づいた。攻撃に移れないのを確かめると、足元から特急列車のなれの果てを掴
み上げる。
「列車を武器にするといかにも怪獣映画みたいね♪ こーんな事までしたりして」
足元では駅を壊しながら、巨大な少女は簡単に列車を引きちぎってしまう。余った部分はヤードの方に投げ
捨ててさらに電車を壊すと、手にした部分は真夜に叩きつける。二度、三度と攻撃を続けるとさすがの電車
も壊れてしまったので、亜梨子は不満そうな表情で投げ捨てると、今度はスカートから伸びる真夜の両足を
掴む。
「あ、それは止めて……」
「さっきのお返し! パンツ丸見えでもいいんでしょう!」
縞模様の布を剥き出しにされながら、真夜が転がされたのはその時だった。駅の残りの部分はこれによって
破壊され、ヤードすらもブレザーから伸びる手が破壊して、複数の電車を潰してしまう。それでも亜梨子は
、まだ壊れていない電車を掴み上げると、それを巨大兎少女のふっくらとした胸の谷間に押し込んでしまっ
た。
「どう? 電車で遊ばれる気分は?」
「こんな事までしないでよ……」
「下で遊ばないだけマシでしょ? ほらほら!」
巨大なブレザー少女の上着をはだけさせ、ブラウス越しに電車をこすりつける行為が楽しかったこともあっ
て、亜梨子は何度もそれを繰り返すと、自分自身もその場に座り込んでしまった。チェックのミニスカート
の下でまた電車が潰れたが、白い布をかいま見せながら、自身の形のいい胸に電車を押し当ててしまう。
「何をしてるのよ……」
はだけた上着を直しながら体を起こして、巨大な兎少女は心底呆れていた。
「ちょっと遊んでるの。面白いじゃない」
「きみには負けたわね。2ポイント目を上げるわ」
「その約束、まだ有効だったのね。もう忘れたと思ってた」
「忘れてないけど、この調子だと全部壊すまで帰るつもり無いんでしょう?」
「当然じゃない」
電車遊びに飽きたのか、亜梨子は電車を投げ捨てて立ち上がった。まだ無傷の地区を見つけると、喜々とし
た表情で襲いかかっていく。
もはやどちらが主導権を握っているのか分からないまま、真夜もそれに加わるのだった。